見えないものを探して ―― ティアラ・パンデミックの世界 1 ティアラ・パンデミックとフィネガン・ジャンプ
☆作品インデックス1 ティアラ・パンデミックとフィネガン・ジャンプ
2019年、新型ティアラウイルスがもたらした伝染病が豪華客船ルビー・プリンス号によってイタリアに持ち込まれたことを皮切りに、新型ティアラウイルス感染症は世界的な大流行となった。
ティアラ・パンデミックが終息しない中で行われた2020年の米大統領選の頃から、陰謀論者と呼ばれる人々が伝染病並みに増えていった。陰謀論という症状は新型ティアラ感染者に現れる脳症状の一つとも疑われたが、意外なことには陰謀論者に感染者は少なかった。
選挙選を制して新大統領になった男が開票間際に奇跡的な大量票を獲得したために、陰謀論者たちはその現象をフィネガン・ジャンプと名付け、陰謀論を多彩な内容にしていった。
陰謀論者たちはフィネガン大統領が不正をしたと信じた。その信念は、収まらない伝染病に飛び火した。彼らは新型ティアラウイルスを作為的なもの、人工的なものと決めつけることを好んだ。
彼らの信念が呼び寄せたかのような内容の論文が、高名な科学誌サイ・エンストに現れた。その論文が後日何らかの理由で取り下げられたため、陰謀論者たちは死体に飛びつくハイエナさながら、その理由を盛んに憶測した。
一方では、新型ティアラはシナの動物市場からヒトに感染が広がったともいわれている。
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